女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『恋の罠』ハン・ソッキュ初日舞台挨拶
2008年4月5日(土) シネマート六本木

ハン・ソッキュ

『恋の罠(原題:淫乱書生)』の公開初日となる4月5日、シネマート六本木にて主演のハン・ソッキュの舞台挨拶が行われました。
2002年の『二重スパイ』より5年ぶり、3回目となる今回の来日は、なんと一週間前に決まったとか!
本国でもほとんどマスコミの前に出ないことで知られるハン・ソッキュ。ファンと直接交流できる場ということで舞台挨拶をすることが来日の条件だったそうです。

『恋の罠』は李朝時代を舞台に、高い身分と教養を持つ当代きっての名文家がハマった”淫乱小説”の世界を描いたもの。韓国では公開15日で250万人を突破する大ヒットを記録。巧みなストーリー展開、配役の妙ともいえる、イ・ボムスやオ・ダルス等魅力的な脇役陣を配し、韓国4大映画祭で美術・衣装賞を総なめにした絢爛豪華な宮廷模様も見所となっています。 熱い歓声に迎えられ登場したハン・ソッキュ。終始にこにこと全身よりいい人オーラを発散。一問一問誠実に答えてくれました。
フォトセッションでは、カメラマンの注文にすばやく反応。スタッフが駆け寄る前に、自ら宣伝パネルを移動しようとする姿に場内に笑いが起こるなど、ハン・ソッキュの穏やかで暖かい雰囲気そのままの舞台挨拶となりました。


− 5年ぶりの再会待ち望んでいたみなさんに一言お願いします。

本当に今日は大入りですね。本当にみなさん有難く思っています。感謝の言葉を伝えたいと思います。

− 原題が『淫乱書生』という大変ユニークなタイトルの作品に出演を決めたきっかけをお聞かせください。

まずシナリオを読んだのですが、夜の11時くらいでしたがその時の記憶が蘇ってきます。一気に読んでしまいました。最初は面白くて笑ってしまったのですが、ラストの場面には感動がくる・・ そう感じたことを覚えています。
この映画のメッセージは「人間は自分がやりたいことをやって人生を送ることが幸せなんだ」ということだと感じましたし、それを自分の演技を通じて観客の皆さんに伝えたい、自分が感じた面白いところ、感動を伝えたいと思いました。

− 現場での雰囲気はどんなだったのでしょう?

現場の雰囲気はよくなるほかない、というほど良い雰囲気でした。キム・ミンジョンさん、イ・ボムスさん・・ みなさんイ・ボムスさんをご存知ですよね。私の第2作目の出演作である『銀杏の木の寝台』の冒頭に端役で出ていました。その時に初めて会ったのですが、セリフをこうやったらいいかな、ああやったらいいかなと、非常に熱心にやっていた姿を覚えていました。その彼がいつの間にか、こういう堂々たる役を張れる役者になったんだなぁと感慨を覚えました。
ミンジョンさんはみなさんもご存知の通り非常に美しい方です。ミンジョンさん、イ・ボムスさん、監督さんももちろんですし、彼らとの現場は非常に楽しい現場でした。楽しいと言っても単に笑いが出て楽しいというのではなく、俳優、スタッフみんなが自分の役割に忠実に、どうやったら上手くできるかという真剣さも合わさった非常に楽しい雰囲気の現場でした。

− ユンソという役柄を演じてみてご自身と共通点はありますか?

共通点はですね、ユンソも私もやりたいことをやってゆくというところだと思います。映画の中でユンソは淫乱な本を見つけて自分のやりたいことを見つけたわけです。私の場合は高校一年生16才の時に、『ジーザス・クライスト・スーパースター』の舞台公演を観て非常に大きな衝撃と感動を受けました。世の中にはこういう仕事があるのだとその時に知りました。私は当時、声楽をやることを将来の夢としていましたが、歌、踊り、そして演技、こういう俳優という職業があるということ印象深く感じました。それが自分の夢を実現するきっかけになったんですが、自分の好きなこと、夢を実現して生きているというところが共通点だと思います。
違いですが、ユンソの方が私よりもずっと勇気があるのではないかと思います。映画の中でユンソは自分の全てをかけて、あるいは自分の全てを捨ててやりたいことを成就させていくのですが、はたして今、もし自分が俳優以外の他の人生を送っていたとして、ユンソのように自分の全てを捧げて自分の全てをかけてそういうことができるかどうか、それほどの勇気があるだろうか、これはちょっと考えてみないといけないことだと思うのですが。

− 映画のラストで額に焼印があって非常にインパクトがあったのですが、ご自身は演じていていかがでしたか?

以前出演した『スカーレット・レター』は原作がナサニエル・ホーソーンの「緋文字」で、不倫の代償として烙印を押されてしまうのです。今回も話は違いますが、自分がやりたいことをやった代償として額に烙印を押されてしまうのです。しかしユンソはその烙印を押されながらも次のアイデア、動画というのはどうだろう、と考えているわけです。もしあれからも話が続くのであれば、ユンソとイ・ボムスさんが演じたグァンホンはいいコンビになって次々と自分達のやりたいこと、アイデアを実現させていったのではないかと思います。
じゃあ私ハン・ソッキュはどういう烙印を押されるのかを考えてみると、よくわからないのですがこういうことがあります。私は自分の甥が通う小学校で一日教師をしたことがあります。韓国ではそういう制度があって親が一日教師をするのですがそこで何を話そうかなと考えて、確か小学校四年生だったと思うのですが、彼らに言ったことは「自分の好きなことをしなさい。自分の好きなことをして人生を送りなさい」という話をしました。これはこの映画のテーマでもあります。自分の好きなことをすることが一番幸福である。自分の好きなことというのは、たいそうなことである必要はなく、重要なことは自分の好きなこと、そしてそれをすることが大事なことだと思います。自分の子供達にも常々言っていることではありますが、果たして子供達がどういう好きなことを選ぶのか、どのようになってゆくのかはわかりません。私自身は自分は好きなことをして人生を送っているので、自分の子供達、あるいは友人達に自分の好きなことをして生きるのが幸福、好きなことをしようと常々言っています。

− 最後にみなさんへメッセージをお願いします。

会場にはファンクラブの方に来て頂いているのですが、韓国で私の映画が封切られるときは必ず来て見て頂いている本当に有難い方たちで、その時に韓国で今度日本で封切られたら絶対私は日本に行くからね、と約束したので、今回その約束を果たすことが出来て本当に嬉しく思っています。もちろん、それ以外の方にも沢山来て頂いて本当に感謝しています。映画を観るということは大変なことなんです。私にとって有難いことですし、時間をかけてお金を出してわざわざ観に来てくださる方々に、本当に感謝したいと思います。有難うございます。


謹厳実直なユンソ(ハン・ソッキュ)が見つけた好きなことは”淫乱小説”の創作。大真面目にのめり込んでゆく姿には、対象の違いこそあれ妙に説得力があります。人はばかばかしい、くだらない(と思われること)ことに、大いに癒されるのだと実感。
これが監督デビューとなるキム・デウ。これだけ完成度の高い作品を作り上げた手腕には脱帽。今後が楽しみです。

後日、シネマート六本木主催の配給会社エスピーオー「宣伝マンが語る映画界のオモシロ講座」では、『恋の罠』をモデルに宣伝の企画段階から公開までの興味深いお話を聞くことが出来ました。
原題は『淫乱書生』ですが、『淫』の文字は字幕にするとR−18指定になるので使用できず、採用されたのが『恋の罠』。どこかで聞いたようなタイトルですが、意外なことに映画には使われていなかったそうです。
更にターゲット層の絞込み、ポスター・チラシの作成、マスコミ試写、予告編の作成、媒体への告知等々、宣伝にまつわる数々の苦労話や裏事情を伺い、一本の映画をまた違った視点からも楽しむことが出来そうです。

(取材・写真・まとめ:日向夏)

★4月5日(土)より、シネマート六本木、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか 全国順次ロードショー

作品紹介はこちら

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