このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『エグザイル/絆』
アンソニー・ウォン&フランシス・ン来日!

アンソニー・ウォンとフランシス・ン

シビれるほどにかっこいい男気の世界を描いた傑作『ザ・ミッション/非情の掟』(1999)から7年。ジョニー・トー(杜[王其]峰)監督がふたたびアンソニー・ウォン(黄秋生)、フランシス・ン(呉鎮宇)、ロイ・チョン(張耀揚)、ラム・シュ(林雪)の渋〜いオヤジ4人を結集して、泣くほどかっこいい映画を撮ってくれました。それが『エグザイル/絆』(12月6日(土)シネマスクエア東急、シアター・イメージフォーラムほかにて公開)です。

ガキのころからのダチで裏社会に生きる5人の男たちが主人公。仲間の一人ウー(ニック・チョン:張家輝)がボスを殺り損ねたことから、二人はボスの命令で彼を殺すために、二人は友として彼を守るためにウーの元へとやって来ます。ウーは殺られる前に妻子に金を残したいといい、彼らは協力することにするのですが・・・

狭い空間で様々な立場の人間が入り乱れて繰り広げられる銃撃戦。気心のしれた仲間たちのじゃれ合い。サイモン・ヤム(任達華)扮する非情なボスの狂気。リッチー・レン(任賢齋)扮する輸送車警備隊の吹くハーモニカの音色。緊張と弛緩のバランスがとにかく絶妙。マカオが舞台なんだけど、思いっきりウェスタンという摩訶不思議な世界。出てくるすべての人物造形が鮮やか! 脚本なしで撮り始めたなんて信じられないほど、そぎ落とされて無駄がない!! とまあ、書きたいことは山ほどあるけど、ネタバレしてはいけないから書けないというジレンマに陥ってもだえております。とにかく観よ!面白い映画とはこういうものだ!!と声を大にして言いたい。『ザ・ミッション/非情の掟』とは別の物語ですが、ゆる〜い繋がりがありますので、前作を鑑賞してから観ると、なお一層楽しめます。去年の東京フィルメックスでは招待作品として上映され、観客賞にあたるアニエスベーアワードを受賞しました。納得の受賞です。

さて、先頃主演の二人、アンソニー・ウォン(黄秋生)とフランシス・ン(呉鎮宇)が来日し、11月2日(日)に記者会見、3日(月)に試写会の舞台挨拶に立ちました。アンソニー・ウォンは『インファナル・アフェア 無間序曲』『頭文字<イニシャル>D THE MOVIE』で来日していますが、フランシス・ンは2001年の『ザ・ミッション/非情の掟』公開にあわせての来日以来では? 二人そろっては初めてです。記者会見でも舞台挨拶でもその名(迷? いや珍?)コンビぶりは遺憾なく発揮されていました。

◆ 記者会見レポート

◆ 爆笑舞台挨拶レポート

◆ 記者会見レポート

2008/11/9(sun)

アンソニー・ウォンとフランシス・ン

12月に公開される『エグザイル/絆』の主演俳優、アンソニー・ウォン(黄秋生)とン・ジャンユー(呉鎮宇。フランシスが英語名だが、どうしてもわたしには違和感ありなのでジャンユーと書かせてもらう)の来日記者会見が11月2日都内ホテルで行われた。
60ほどの用意された椅子が足りないくらいの取材陣。残念ながらテレビカメラは入っていなかったが、録画している媒体もあったようなので、動画で観ることも可能になるだろう。

少し遅れて始まった記者会見。とにかく二人の発言がまじめなのか、ふざけてるのかわからず、とても楽しませてくれるものだった。

黒尽くめの衣装に黒いサングラス姿のアンソニーは、映画の登場人物そのもの。一方、長髪でサングラスをかけたジャンユーは少しほっそりして若々しい。いつものこわもての感じより、ソフトでこんなにかっこよかったんだと見直してしまった。

黄秋生(アンソニー・ウォン)登場  呉鎮宇(ン・ジャンユー)登場

開口、日本語での挨拶をした二人。
撮影中の楽しいエピソードを聞かれると、アンソニーはジャンユーが車を岩にぶつけてガソリンが漏れ出して,あわてて皆で逃げ出したことや、ジャンユーが寒い屋上の撮影の時、羊しゃぶしゃぶや臘腸飯(中国ソーセージをのせたもの)を作ってくれたので、皆太ってしまったことをあげていた。
 一方ジャンユーは、共演者の林雪(ラム・シュー)の赤いパンツのエピソードを紹介。
 怪我をしないために危ないシーンで履いてるように占い師から言われていたのだが、椅子から飛び降りるシーンで怪我をしてしまった。なんと、その時は赤いパンツを履いていなかったとか。
 またロイ・チョン(張耀楊)にカンフーハッスル(功夫)の大家のおかみさん(小龍女)とあだ名をつけて呼んでいたという。長い髪の毛にカーラーを巻いてくわえタバコで立ってる姿がそっくりだったかららしい。(その姿を想像しただけで笑えてくる)

撮影中つらかったことは撮影期間が9ヶ月と長かったこととジャンユー。何しろ自分達は黒社会映画の重要な役者達だから、9ヶ月間も他の黒社会映画が撮れないと香港映画界にも、香港市民にも大損失だとまじめな顔で答えてる。
 確かに二人のほか、サイモン・ヤム(任達華)、ロイ・チョン(張耀揚)ニック・チョン(張家輝)と、香港黒社会映画には欠かせない役者ばかりだもの、彼らが拘束されてては他の映画会社は大変だったろう。でもあのジョニー・トー監督では、誰も文句言えないのでは。

アンソニーは、この映画がストーリーも脚本もなく、どんな役かの説明もなく悩んでしまった。他の3人からもどうなるのか毎日聞かれて困ってしまったと言う。
 どうやらアンソニーが 色々他の役者たちに監督の意図することを代わりに伝えていたようだが、このことを聞かれると監督に直接聞く勇気がなかったとジャンユー。それにアンソニーは教えたがりだから、聞かれると喜んで教えてくれたからと。

長い撮影期間の暇つぶしも、アンソニーが精進料理をご馳走したり、皆でカラオケなど出演者たちは中々仲良くやっていたようだが、監督にはあまり交流がなかったと言ったのは、冗談なのか、それとも本当にトー監督って怖いのか。マジで聞いてみたいものだ。

目と目で通じ合う

こわもて姿のアンソニーが時折見せる笑顔がとてもかわいらしく、答える合間に二人が目と目で合図してる姿がなんとも微笑ましい会見であった。
 しかし、アンソニーが先輩風をふかしていたが実際の年齢は同じはず。1961年9月生れのアンソニー(1962年説もあるが間違いらしい。)と1961年12月生れのジャンユー。どちらが老けすぎてるのか、若作りしすぎなのかわからないが、違いすぎの外見にはいつもびっくりさせられる。(ちなみにアンディ・ラウは同い年、トニー・レオンは一つ下)

『ザ・ミッション/非情の掟』(原題:鎗火 1999年 日本公開 2001年)の続編といわれているこの作品は、とにかくオヤジたちがかっこいい映画。ジョニー・トー作品が大好きな人にはたまらない作品だろう。

記者会見写真集
まじめなんだか、ふざけてるんだか 笑いの絶えない会見 この日のファッション。赤に紫はどうよ

return to top

(文・写真:樹花)

◆ 爆笑舞台挨拶レポート

2008/11/9(sun)

渋いオヤジ俳優好きのわたしにとっては、二人がそろって来日なんて、ありえないうれしさ。前売り券を買うとファンの集いに応募できると知り、脊髄反射で買って応募したクチであります。ファンの集いは定員40名のところ、1000名以上の応募があったということで、わたしは見事にはずれましたが、この日の舞台挨拶付き試写会の招待券がもらえました。ところが舞台挨拶取材のお話が図らずもやってきて、結局取材で入ることに。間近で二人のおかしなやりとりを見られた(といってもほとんどレンズ越しになっちゃうんですが)のは、大変うれしいことでした。会場の一ツ橋ホールはぎっしり埋まり、中にはアンソニーのうちわを手に待ちかまえるファンも。この日の司会は香港カルチャーライターの水田菜穂さん。楽しい舞台挨拶が期待され、始まる前から熱気に包まれておりました。

以下、=アンソニー・ウォン、=フランシス・ン

---
それではまずお一人ずつ簡単なごあいさつをお願いします。
黄:
あ〜、コンバンハ!(観客から歓声があがる) ・・・
---
ほんとにそれだけ? (場内爆笑)
呉鎮宇のガッツポーズ
呉:
あ〜・・・、コンバンハ!(笑いと拍手)
---
すばらしい、あ・うんの呼吸でございます。ちなみに、フランシスさんは9月に男のお子さんが誕生されました。
(場内の拍手に答えてフランシスはガッツポーズ)
---
今日はですね、お二人のファン、香港・アジア映画のファン、それ以外にも香港映画を全く知らない方、香港にこんな素敵な俳優さんがいると知らない方まで、実に色々な方がお見えになっているんです。ですから、いつものようにではなく、わかりやすく映画を説明していただきたいんです。まずアンソニーさんに。この映画の特徴をお話下さい。
黄:
この映画の特徴は非常に独特で、すごく面白いってところです。
---
ではフランシスさんに違う答えを期待しましょう
呉:
この映画の特徴は・・・、演技派の俳優陣が、モデルがキャットウォークするみたいに演じてしまったところですね。
---
この撮影は、香港でも、いえ世界的にも珍しいかも知れませんが、脚本がない上にストーリーも決まっていなかったという、とても珍しい作品です。お二人は脚本がないと聞いたとき、どう思いましたか?
黄:
脚本がないのはまあ普通のことですよ。俳優までいないとなったら、それは珍しいけどね。
呉:
脚本がなくても、俳優がいなくてもぼくには関係ないですね。ギャラさえちゃんと払ってくれたら。
歓声に応えて控えめにグーする黄秋生
---
9ヶ月間に及ぶ撮影で、それも主にマカオでの撮影だったそうですが、長〜い海外旅行をしているような感じだったんでしょうか?
黄:
長〜〜い、しゃぶしゃぶの時間でした。
呉:
男たちが集まって豪華なクルーズ旅行をしているみたいな感じで、我々俳優たちにとってはとても楽しい時間でした。できあがった作品がこんなに迫力あるものになったのは、全部監督の力ですね。ぼくらはただしゃぶしゃぶをしていただけです。
---
ではその監督のすごいなぁと思うのはどんなところでしょう?
黄:
声のでかさだね。声がでかいもんだから、どんなに遠くにいても、あぁ監督来たなってわかるし、また怒鳴り散らしてるな、今日の仕事は終わりだなってわかるんですよ。そこがすごい。
呉:
監督はとても趣味人で、葉巻とワインについてとても詳しいんです。撮影現場ではいろいろ教えてもらいました。現場ではいつもブランドものの葉巻を吸っていて、撮影の日数イコール葉巻の本数ですよ。
---
漏れ聞いたところに寄りますと、ジョニー・トー監督はこれだけ何度も一緒に仕事をしているのに、ときどき皆さんの名前を間違えると伺っています。それは本当ですか?
呉:
本当だよ。(二人して監督の真似をはじめる)
黄:
(フランシスに向かって)あ〜、あ〜、秋生!
呉:
(アンソニーに向かって)あ〜〜、ラウ・チンワン(劉青雲)!青雲!
でもまあ、ぼくたちもしょっちゅう監督の名前を間違えるんで、お互いさまです。もうひとつ、監督凄いなと思うのは、夜の撮影の時もサングラス姿なんですよ。よくこけずにすむなと思うし、ちゃんと撮影できるなと思います。そういえば、今日アンソニーはサングラスだね。
黄:
そう、監督のマネさ。
---
あのぉ、監督としての素晴らしいところをお聞きしたかったんですが・・・
監督の声のマネをしてみせる黄秋生
黄:
だから、監督として本当に声がでかいってのは必要なんですよ。「カァ〜メラッ!」「カァット!!!」(拍手喝采)
---
フランシスさんも同じ考えですか?
呉:
もちろんです。監督がでかい声で叫ばなきゃ、ぼくら役者は役に没頭しているとカットの声が聞こえなくて、ずっと演じ続けちゃいますからね。
---
わかりました。今のお答えは、映画を考えるな、身体で感じろというメッセージだと受け取ります。
黄:
自分自身はそうやって映画を楽しんでいます。日本の観客がどうなのかはわからないけど。
呉:
どうして映画の前にこんな冗談ばっかり飛ばしているかというと、映画の後はぼくらのことを思って泣きながら出て行くんじゃないかと。その前に場を和ませておこうと思ってやってるんです。
---
すご〜くよくわかりました。非常に計画的にやっているわけですね。では、その最後くらいはまじめに(笑)。皆さんにどうしてもこの自分の演技は観て欲しいというシーンを一つずつ教えて下さい。
黄:
一つのシーンと言うよりも、作品全体がとても素晴らしいです。9ヶ月のあいだ、たくさんの仲間と力を尽くして作り上げました。日本の観客の皆さんに気に入っていただければと願います。
呉:
あ〜・・・、銃撃シーンではぼくらそれぞれ1000発以上の弾を撃ったと思います。とても危ないシーンも多かったですが、自分で演じています。でも、それだけではなくて、ストーリーの展開に皆さん集中して観て欲しいです。
---
最後に、映画とは全く関係のない質問をお二人に一つずつさせていただきます。まず、アンソニーさん。役作りで必要となったら、10kg、20kg太りますか? 呉鎮宇の秘密を暴露する(?)、黄秋生
呉:
(手を挙げて)ぼくが答える。別に太る必要もないでしょ。もう十分だよ。
黄:
ダイエットしたい人は、フランシスに近寄らない方がいい。撮影現場のしゃぶしゃぶは全部彼が持ち込んだんだから。
---
では、フランシスさんに。今、髪が長くなっているのは作品のためなんですか?
黄:
(速攻手を挙げて)俺が答える! 実は奥さんがあまり子育てが上手じゃないんで、彼は子どもがお母さんのこと忘れるんじゃないかと心配して、髪伸ばしてお母さんのふりをしてるんだよ。
---
さすがお互いをよく知り尽くしているという感じのお答えでした。
黄:
実は、俺たち結婚した方がいいかもしれない(笑)
(腕を組んでみせる二人)
---
ファンはそれを心待ちにしております。
花束をもらってフォトセッション

このあと花束贈呈とフォトセッションがありました。花束贈呈ではフランシスがプレゼンター役のスタッフをハグして、会場からはキャ〜!!!という悲鳴が。役得すぎる…。フォトセッションでは、カメラマンから「もう一度腕組んで!」というリクエストに、え”〜という顔をしながらも、しっかり応えてくれました。そしてムービー用に手を振り始めたところで、フランシスが突然アンソニーにキスの強襲! ムキャァ〜〜〜〜〜!(舞台挨拶写真集をご覧下さい)

---
みなさま、お楽しみいただけましたでしょうか。二人の仲の良さも十分わかりましたし、この二人はなんなんだろ?と思った方も、映画を観ればなるほどと納得がいくと思います。是非この後、映画をお楽しみ下さい。
舞台挨拶写真集
アンソニー・ウォン フランシス・ン アンソニー・ウォンとフランシス・ン アンソニー・ウォンとフランシス・ン アンソニー・ウォンとフランシス・ン
アンソニー・ウォンとフランシス・ン アンソニー・ウォンとフランシス・ン

return to top

上映情報はこちら
(文・写真:梅木)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。